津軽収穫

今年は何度も津軽を食べてみた
味が濃い
酸味もしっかり糖度も載っている
そして求めていた深いコク
生産者なればだれもが求める収穫量
でもどこまで行っても満足できないのはなぜか
量では食べた人の心をつかめないという課題が残る
求めたのはこじんまりした凝縮されたりんご
そのために肥料も研究してきた
命はコクをもたらしてくれる微生物が作り出すアミノ酸のための餌
たい肥はそれらの住処
木酢液は微生物の餌
求めた味がやっと出来上がってきた
食べた人が言葉も出ないほどに満足してくれる味
でんぷんが残る時期に市場にもっていけば高く売れる
だが味のしないりんごを食べてもらうわけにはいかない
俺はプロなんだ
日を追うごとに増す味
収穫日は自分が決める
それが釈迦のりんご園流儀
収穫しながら今日も5個くらい食べてみた
よし
よし
これなら大丈夫
収穫が終わってからみんなで選果
マイコン選果機に乗るりんごをすべて確かめてみる
先日のりんごの予約注文に入っていたメッセージ
昨年偶然御社のりんごを食べてみました
初めて感じた満足感に一年分予約できますかと書いてあった
量は確保しますがその都度で大丈夫ですよと返信
こんなやり取りがどれほど励みになるか知れやしない
経費削減で化成肥料だけでもりんごは作れる
量を求めて大きくもできる
ブランドとは人を裏切らないことだと信じている
一生懸命だとか思いがこもっているとか
くそくらえ
飯も食えないくらいに貧乏してでも土づくりにかけた半生
誰にも負けない自信はどん底から這いつくばって作り上げたもの
人が捨てたトラックに車検を取って10年も使ってやってきた
そんなさなかでも父の代から絶やさなかったたい肥投入
林檎を運びながら味わって涙がこぼれてきた
ここまで来るのに38年かかった
極貧生活が苦しかったのではない
折れない心のままでいることが苦しかった
釈迦の名に恥じないりんご園はこれからもずっと挑戦者で行くと思う